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title. project 3-22 黒四方

date. 2022

city. Tokyo

type. 樂

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四方の黒樂盌である。
黒樂の四方といえば長次郎の『ムキ栗』があるが、この『ムキ栗』、ただ四角いだけの楽茶碗ではない。
四角い口辺部から丸い腰の部分へと移り変わる部分、その段状の造形に妙がある。


『ムキ栗』の造形を意識しつつ、口縁の高さに大きな変化を与え、面ごとの表情変化を追求した。
また、『卯花墻』のように見る角度によって次第に、やがて大きく姿を変える茶碗を目指した。

茶盌を回すと面と角が交互に来る分、自然、面が連続的である円形の茶碗に比べて滑らかに変化させていくことが難しい。
高台は大きめのものを織部のように削り出した。


カセた釉薬は印象を重くし過ぎてしまうと考え、光悦のような光沢のある黒釉を施釉することとした。
ガラス分の多い釉薬であり、温度を早く上げて溶かしてしまうと、土中の空気が釉薬の中で纏まって弾け、クレーターのようになってしまう。

そうなってしまうことを防ぐ為、じっくりと溶かしていき空気による泡を消していく。
形状の複雑さゆえ、小さな窯内の炎の動きがかなり複雑となるため、頻繁に位置を変えて焼いていった。

トチ跡が沢山みられるのは、そのためである。

 


3時間ほどフイゴをふき続け、泡が殆ど無い状態まで持っていき焼き上げた。
高温状態から急冷するので、初期の瀬戸黒に見られるような、縦に長い貫入が入る。
高台周辺は酸化気味、口縁部は釉が飛んでいるところもあり、地肌の土は還元気味の色である。
口縁部のトチ跡や、側面のガスが掛かった部分など、炭で焼いたことのさりげない証左達は、そのまま景色となっている。


少し重量が重く思われるが、重心移動を考え、敢えて重さを残してあるので、お茶を飲む際には寧ろ安定して感じられる。
動きの大きな一見奇抜な茶碗だが、実用の点は一層考慮しており、点前の中でこそ活きるような茶碗を目指している。

実際に点前の際、茶筅や茶巾、茶杓を仕込んだ状態において放つ存在感は大変安定している。
古式を意識しつつ、現代の茶盌たる造形/釉調の表現を目指した、2022年最後の一碗である。

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