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茶碗とは

茶碗の魅力は、手の中でじっくりと鑑賞できるところにあると思う。

したがって本来は、実際に手にとって鑑賞するのがベストである。

しかしここでは、ひとまず目で見てわかる鑑賞ポイントを以下に整理する。

​■各部名称

説明.png

​■正面と飲み口について

茶碗には見せ場のある「正面」がある。

絵のない土物の場合は分かりにくいものが多いが、形や印から判断できる場合もある。

(一応作者としてはココ、という場所がある)

「正面」は基本的に点前中は亭主に向かい合っている。

また、お茶がたってお客さんに出されるときは客の相対する。

そして一般にお客さんはお茶を飲む直前に茶碗を回し「正面」を避ける。

その位置が「飲み口」と言われ、口辺の形状や、胴から高台までの形状が飲みやすいように調整されている。

(私の茶碗はだいたい時計回りに90度ほど回した位置を飲み口としている)

(例)

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正面

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飲み口

■茶碗の造形について

 

茶道において、数ある道具の中でも茶碗は、亭主(host)と客(guest)の両者手にとって用いる数少ない道具の一つである。

亭主としては、お点前の中で使いやすい形が望ましいし、客にとってはお茶が美味しく頂ける形が望ましい。

それぞれ、場面によっても様々な持ち方がなされる。

さらに客はお茶を飲む直前に約90度ほど茶碗を時計回りにまわす。

​理想は、全ての場面に対してベストな造形がなされていることである。

こうした機能面の条件すなわち「用」の条件を満たして、はじめてその先の「美」を追求していけるのだと思う。

■銘について

器に付される固有名詞である。

銘の付け方は様々あるので以下に例を示す。

・『早船』(千利休が大阪で茶会を催す際、京都から早船で取り寄せた)のように、逸話や出来事から付けられるもの

・『七里』(七里彦右衛門、所持(当時))のように、所蔵者の名前から付けられるもの

・『乙御前』(ふっくらとしたおたふく)のように、造形の印象から付けられるもの

銘は絶対のものではない。銘はその器の魅力を、あくまで一個人の視点から自由に表現したものであるべきだ。

形や色から発想を飛ばしたり、個人的な出来事を思い出として付けてしまったり。

したがって追銘上等である。長い間、愛されている器に沢山の銘がついているのは嬉しい。

特に意味のない銘を茶席のために暗記して言わねばならないといった状況は何とも悲しい。

■樂茶碗について

次に、メインで制作している「樂茶碗(らくちゃわん)」の説明を手短に行う。

焼き物と聞くと、回転する轆轤(ろくろ)や、ドボンと付けられる釉薬、登り窯などの様子が思い浮かぶかもしれない

樂焼は基本的に、これらの手法を用いない。

むしろ、

  1. 手捏ね(てづくね)と言って、終始てのひらの中で形作り、削っていく

  2. 釉薬は筆で何度も丁寧に重ね塗りする

  3. 焼成は一碗または数碗ずつ、鞴(ふいご)を使って炭で焼いていく

という手法が用いられる。

したがって、自ずと一つ一つの作品に多くの意識と時間が掛けられる。

 

つまり大量生産ではなく、一品生産に近い。

勿論どちらが上という話ではない。

少数に力を注いで良いものを目指すか、多く作った中から少数の良いものを見出すか。

それぞれ美に辿り着くルートであることに違いはない。​

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焼成中の窯の様子

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窯から茶碗を引き出す様子

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