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岩塊茶碗

楽焼(2024年、東京)

大きな火山弾を手にする機会があった。ゴツゴツとしつつ、ヌタっとした滑らかな面もあり、不思議な割れや傷もあって、角度によっては鬼面にも見える。それが手の中で、急に茶碗になった。ゆっくりとお茶を飲む動作をしてみる。複雑に面が重なり入り組んでいる火山弾の造形は、そのままでは茶碗にならないが、それでも茶碗になっていく予感がした。

しかし火山弾を茶碗と思わせた魅力をすくい取ろうとしても、なかなか掴めない期間が続いた。そこで、火山弾からの直接的なインスピレーションだけではなく、自然の岩に対して抱いてきた愛着をたどることを思いついた。古い庭園の放棄された手水鉢、力を発し続ける崩れた山城の石垣、化石掘りのおじいさんが石を割り続けていた英国の層状の海岸壁、スイスの山々の肌、、石や岩、山の魅力を感じた断片的な記憶が、火山弾を徐々に茶碗としてまとめていった。

加茂川石や鬼板を中心として調合した3種類の釉薬を掛け分けている。

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