有機的な手捏ねの茶碗に幾何学立体を貫入させる試みである。3Dプリントした型を用いた2021年の茶碗『不思議』にも近い試みだが、『不思議』が凹的な営みで出来たとすると、こちらは幾何学立体が飛び出す凸的な作りをしている。◯△□は仙厓義梵の有名な禅画にも描かれたモチーフであるが、ここではそれぞれ少しずつ崩された形をしており、茶碗の内側の世界に緩やかに誘われる心地がする。それぞれの立体が、割持ち(親指を手前にかける持ち方)にも抱え持ち(抱えるような持ち方)にも対応していて、不思議と持ちやすくなるよう設計している。