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title. project 3-17​ 『曙雲』

date. 2022

city. Tokyo

type. 樂 Raku

​個人蔵 sold

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『藤浪』以来、三年ぶりに丸いタイプの茶盌に挑んだ。丸い茶盌は掌の中で作り出される、ロクロではなく手捏ねだからこその形である。


腰が丸く、高台の存在感があまりないタイプの茶盌は、その持ち心地が、腰と高台がしっかりとある茶盌と比べると大きく異なる。それは、写真を見るだけではなく実際に持ってみないと分からない。5年にわたり光悦の『乙御前』の写しに取り組む先輩に、素焼き前の作品を持たせて頂いた。そのときに抱いた感動、丸みが重心との兼ね合いの中で実に気持ちよく作用している、言葉では形容しがたい造形の威力にやられ、自分の解釈のもと、丸い茶盌に再び取り組むことにした。

信楽土に赤土を一定の割合でブレンドした土をつくり、土がまだ柔らかいうちに掌の上で成形していく。その過程で現れた凹凸やヒビを一つひとつ吟味し、残すものは残し、不要なものは消していく。結果できた茶盌は、手にフィットし、土の持つ柔らかな質感を残す造形となった。

高台の周辺は腰を締める過程で立ち現れた起伏の表情を活かすこととした。お茶をいただく際に手にしっかりと馴染むことを意識した結果、高台自体は典型的な形をとっていない。茶碗の安定性や、建水に水をあける際の指の掛かりなど、点前に必要な高台の機能は保ちつつ、腰までの高台周辺を一体のものとして捉え、土の動きを残すところ、あえて直線的に刃で落とすところ、全体の機能的/造形的な調和がとれるまで手を動かし続けた。瞬発的/偶発的な操作も多く、この高台周辺は自分自身でも再現不能と考えている。


赤土がブレンドされ赤く発色する土に対して、実験を重ねた「厚く重ねると白みがかって発色する」釉薬を丁寧に筆で置いていく。造形に合わせて、全体として柔らかい赤となるよう意識して施釉し焼き上げた。


釉薬の淡い発色や全体の丸みを帯びた穏やかな造形、口造り内側のぽってりとした削りなど、おおらかな曙の雲が連想された。そのイメージから曙雲(しょうん)と自分では銘をつけた。

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